「絶対加速クレッシェンドQ」の紹介
周囲の人々の中に溶け込めず、孤独を好む種族の赤羊が、親との関係や捨てられないプライドや他人と本気で関われない悩み、中二病に別れを告げる、他者と接し、対話し、考え、自分を見つめて現実や世界と向き合い、成長していく物語です。
戦い続ける本能を植えつけれた赤羊は職に就きづらく、戦争ごっこが生業です。
彼らが戦う様子を人間たちが見て楽しむ、それが地球とは別の次元にある魔界の日常です。
なので強くなる為に修業したりバトルをしたりする描写もありますが、メインは会話劇で、戦闘の勝敗という結果より、悩みと答えを出していく過程が大切に描かれています。
ただ、相手の言葉を受けはっとして考えを改めるような劇的な変化よりは、経験を己の中で煮詰めて煮詰めて気づきを得て、それを口に出して他者=世界と向き合っていきます。
中二病ファンタジー漫画がお好きな方は一話からでも差し支えないかもしれませんが、先に三話か二話18ページから六話までをお読みいただいた方が内容をつかみやすいかもしれません。
一話は導入から世界観や設定の説明が怒涛の長文で繰り広げられている為、主人公のミナセと、序盤の主軸、他者と関わり変わっていくメインヒロインのナナミのエピソードから読み始める方が入りやすいと感じます。
ミナセは女の子が好きで一見気が多いように見えるけど、親と一度も会えずその愛情を知らず、自分への好意を上手く受け取れず相手をココロから愛する事も、他者=現実と向き合う事も恐れている中学生の赤羊です。
そしてコミュニケーションが苦手で、幼い自分を捨てた父親をずっと思慕し続けるナナミ。
右目を斬り去った父の絶をそれでも大好きで、彼の強さを追い求める。自分の中に再現しようとする。父への理解、自分への救いにつながると信じて。
しかし父が自分を好きじゃなかったと気づいた時、自分は独りだと気づいた時、彼女は・・・。
三〜五話は写植が行われておらず、描き込みの密度も高く読みづらいと思いますが、最初は無理にセリフを理解しようとしなくても「女の子たちがいっぱい考えているな」と何となく感じていただくだけで大丈夫だと作者の不死鳥先生も仰っています。
単純な中二病漫画に見えてテーマは「中二病からの脱却」で、かつ見事で描き切った点が非常にレアで、一話として無駄が無く登場人物が一歩一歩着実に進み成長していく構成も巧みです。
他人との関わりや社会への順応が苦手な誰もがきっと直面する、だからいつの時代も共感や感動を呼ぶのでは無いか、今悩みを抱えている人やかつて抱えていた人には刺さる部分が多いんじゃないかと思います。
お読みくださった方に、何か得るモノがありますように。